お墓の知識 1

永代使用権の性質

 

 墓地の分譲は江戸時代、寺を中心とする檀家制度の中で、寺が檀家に墓地の用地を無料で貸したのが始まりです。借りた檀家は長男が代々それを引き継ぎ守っていきました。檀家は草地を華料で借りる代りに、寺 の経済を自分たちの寄付で支えました。


 近年はこのような檀家制度に基づく墓地(寺墓地といいます)が次第に少なくなり、公益事業として自治体や公益法人が大規模に開発した公開墓地を有料で分譲するようになりました。しかしほとんどの墓地の権利の形態は 昔と同じ「使用権」であり、「所有権」ではありません。宅地などの不動産のように売買として行われるのではなく、使用契約を締結します。


 この使用権を「永代使用権」といい、「墓地を買う」ということは永代使用権を買うことです。

(まれには所有権分譲の墓地もあります)

 

 使用権は相続税や贈与税の対象にならずに、承継者に次々と引継がれます。


 幕地の永代使用権はどんな場合でも登記はしません。永代使用権は墓地の経営主体が発行する「永代使用権利証」で保証されます。

 

「永代使用権」は2つの要件から成り立っていて、次のような性質を持っています。

 

1.

 物を支配する権利には『物権』と『債権』があり、『物権』は手に入れ ると自分の意思だけで完全に支配できます。例えば宅地の所有権のような権利です。

 一方、『債権』は相手との契約に基づき契約内容の範囲内でしか支配できない権利で、例えば資材置場として土地を一時的に借りる契約を結ぶような場合とか、取引条件を決めて取得する営業権などのような権利です。

墓地を買うときは霊園の経営者と『永代使用契約を結び、この契約で約された範囲で墓地を使用することが許可されます。ですから墓地の永代使用権は『債権』です。     

 宅地の所有権のような『物権』は一旦買い取ってしまうとその後相手がどうなっても自分の権利には影響せず、自分の自由な意思で他人に譲渡できます。
 一方『債権』は契約の内容を勝手に変えることはできず、自分の自由な意思で他人に譲渡することはできません。従って墓地は勝手に他人に譲渡できません。

2.

 次に永代使用権とは「お墓を建てるために土地を借りて使用する権利」であり、お墓を建てることが権利の要件となっています。

永代使用料即ち墓地代を支払ってもお墓を建てなければ墓地の完全な使用権は成立しません。

このような権利の性質は宅地のような所有権とは基本的に異なります。

 どこの霊園も使用規則で墓石建立の期限を短く定めているのはこのような使用権の性質に基づくものであり、市営霊園の場合でも墓石建立期限は3年以内で、これを過ぎると墓地は没収され、しかも墓地代は返金されません。

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